ビール一つ一つに物語がある大阪では有名な西成区のブルワリー。
ドイツのスチーム・ブリューを思い出しました。
1987年にリリースされたゲットワイルドな曲の歌詞とよく似たストーリーのビール。
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ビアデータ
ビール名:NIGHT RIDER ROUTE26
生産地:日本 大阪府大阪市西成区萩之茶屋2-10-2
生産者:DERAILLEUR BREW WORKS
アルコール:4.5%
IBU(苦さ 平均15~20):51
モルト:
ホップ:
タイプ:セッションIPA
価格:530円
インポーター:
ブルワリー
Derailleur Brew Works(ディレイラブリューワークス)は朝から酒を楽しむ街「AREA2470=ニシナリ」にこだわり、西成ライオットエールのレシピを再現するために設立された、クラフトビール工場と企画運営チームの集合体です。
フランス語で「道を外す者=生き方を自分で選ぶ者」を意味するディレイラを冠し、常識や一本道に囚われない発想やマインドで、ビールを作り続けていくことを信念としています。
ひとつひとつのビールには、それぞれ込められた思いや背景があります。
誰が、何のために醸したのか。
どんな想いで醸したのか。
悔しかったのか、喜んで欲しかったのか。寂しさを癒やすためだったのか、または、怒りだったのかもしれません。
届けたかった、伝えたかった、思いや背景を、私たちは、ビールの味だけでなく、ラベルのデザインもすべて活用して、伝えていきたい。
人生の数だけ、物語(ストーリー)があるように。
醸されたビールの数だけ、物語がきっとある。
言葉が役に立たないときには、純粋に真摯な沈黙が、しばしば人を説得する。
だけど、沈黙だけじゃ、伝えきれない想いが溢れるのなら。そっと、物語(ストーリー)に想いを乗せればいい。
ほろ酔うみなさんのそばで、物語とともに。味わってもらえたい、ビールがここにあります。
このビールは
アスファルトに電磁輪(タイヤ)を切りつけながら、暗闇を走り抜けていく。
明日が来ることに怯えていたフリアールは、このまま何かに衝突してしまうからもしれない。ブレーキのない、上がり続けるスピードの中で。陳腐としか言えない恐怖と極度の不安の緊張感に、身を任せていた。
phantom pain
幻肢痛。14歳で失った右腕と右脚。17歳で失った初めての恋とピアノ、そしてカネダ。
フリアールが住んでいた南港(サザンポート)地区。唯一の公会堂があり、かつて父が作っていたビール。
その横にずっと鎮座していたエルカミーノ。69年式。父の生まれた年だ。骨董品にも程がある。ハンドルにはいつもメモが挟まっていて。父は、そのメモをフリアールにみせることだけを拒んでいた。
いつも助手席には座らせてくれたのに。
恋とピアノと、カネダを失ったフリアールは、ブレーキのいらない、スピードが上がり続ける日常を選ぶことにした。
カネダが好きだって言っていた古い映画があって。そこに出てくる前時代的な人造人間がいて。
それを模して右腕の義手を作った。
T-800の焼印を入れて。
蒸気稼働装置を動力源にしたのは、もちろんカネダへの尊敬だ。
すこしの愛と。
自分の意思で失う右腕には、不思議と幻肢痛ってなくて。
フリアールの義体で、唯一神経接続の同期指数が100%を叩く部分だ。
父の残していたメモは、普通の父親が思うそんな他愛もないメモ。
フリアール、きみが20歳になったときに、きみを運転席に座らせて、僕は、横で、ビールを呑みながら、きっと今以上に、ママに似て綺麗なレディになったきみを見ていたい。
それが、僕の、パパの夢だ。
普通の父親が思う、そんな他愛もないメモ。
エルカミーノの動力を5年落ちの蒸気装置に入れ替え、吸入量を制限撤廃(リミッターカット)した。
旋回性能と見た目とのトレードオフだ。全くの妥協で、ヒビの入ったゴムタイヤを電磁輪に交換する。
それだけで、ルート26で誰も追いつけない。
たったそれだけ。
あとは陳腐な恐怖に身を任せるだけ。
代理頭脳(ナビゲーション)は、政府推奨のものを入れる決まりがあるらしいのだけど、少しばかり調整した、ガサツなお手製の相棒に。
乗り込み、ハンドルの横に、グラスをセットする。
父の好きなビールをなみなみと注ぐ。
このビールを溢さないように操作(ドライブ)する。
右脚をエルカミーノ69年式に直接接続(ダイレクトドライブ)。
ハンドルの周りに25個ある情報灯が全て点灯する。
その瞬間だけは、フリアールは、いつも、父と歩いた照り返しの夜景の街、シン・世界を思い出す。
余韻に浸る間もなく代理頭脳の起動が始まり、ステロタイプの電子合成音との挨拶を交わすのが、彼の機嫌を損ねないための儀式。
「ねえ、エディ」
「ハイ フリアール。トビッキリ ノ ゴキゲン ノ ロック デ ツッパシロウ ゼ」
返事をしないでスピードを上げていく。
エディは自分のお気に入りのロック・ミュージックを流し始める。
phantom pain
フリアールは思う。
わたし一人では、解けない、愛のパズル、執着心、喪失感、希望、未来、嫉妬、後悔。
全てを抱いて走り続ける。
この街は人造忽布に溢れ出してから、何かがおかしい。違和感。
先には堕落だけしかないやさしさ。
この街のやさしさに甘えていたくはない。
次の交差点(クロスロード)を曲がれば、ルート26に入る。
おそらく忽布集団(ホップヘッズ)と、彼らに操縦された機動警察たちが封鎖を狙っている頃だろう。
「エディ、そのまま突っ切るわ。最適解の侵入角を計算しておいて」
「モチロン デス フリアール 2.8 ビョウ ゴ ニ 56 ド デ シンニュウ ソレガ イチバン ロック デ・・・」
フリアールはエディの口調を真似て重ねつぶやいた。
「ロック デ ホップ」
電子合成音の笑い声が、ルート26上のネオンに消えていった。
Derailleur Brew Worksの準定番ビール、『NIGHT RIDER ROUTE26』
5種のホップを贅沢に使い、フルーティかつ苦味をにごりなく調和させ、南国の花の香りもそこはかと漂う、アルコール度数低めながら華やかなセッションIPAとなっております。
ディレイラブリューワークスのビールづくりを
心おきなく堪能してください。
テイスティング
濁り黄金色。
粉っぽい柑橘系の香り。
穀物感のある香り。
トロピカルフルーツ。
苦味は程々。