我々のお年寄り世代は軍港のイメージが強い呉市の新進気鋭ブルワリー。

酸を大事にしているっぽい味わい。

 

ビアデータ

ビール名:Sunflower Wheat Ale
生産地:日本 広島呉市安浦町大字中畑1238
生産者:IB BREWING
アルコール:5%
IBU(苦さ 平均15~20):30
モルト:
ホップ:コロンブス他
タイプ:ウィートエール
価格:720円

ブルワリー

広島市内から車で40分、電車で1時間かかる町、広島県呉市市原。
時を遡ること2018年6月、 台風7号および梅雨前線等の影響による集中豪雨が西日本を中心に降り注ぎました。
現在醸造所がある呉市も甚大な被害を受けました。 一夜にして一変した生活。

西日本豪雨災害は多くの死者と多くの思い出を流しました。
被災地には多くのボランティアの方が駆けつけ、 私も土砂や瓦礫の撤去作業を行いました。
被災後も思うように整備が済んでいない地域もあるのが現状です。
特に私がボランティアで入った市原地区の世帯数は、被災前の20世帯から被災後に10世帯にまで減少し、消滅集落の一途を辿っています。

壮大な山々に囲まれ、すぐ横を綺麗な野呂川が流れるこの自然豊かな村がなくなってしまうのはとても寂しく思い、市原に時折足を運ぶようになりました。

2021年2月、私が市原地区へ足を運ぶようになり数ヶ月、とある転機が訪れました。
災害前、市原地区に住まれていて災害後に市原地区から引っ越された方との出会いです。
もともと別の地域で醸造所を造ろうと物件を探しに苦戦していた時に私の夢とご自身の想いを重ねられ、大切な大切なお住まいを貸していただけることになりました。

土砂災害により家族を亡くし、住んでいた建物も土砂に浸かり住めなくなった。
ここへ戻ってくるたびに家族と過ごした楽しい思い出と家族を亡くした怖い思い出がよみがえる。
ただ何もせず空き家にしておくのもご先祖さまにも失礼だし何より亡くした家族に顔向けできない。
あなたがこの建物に再び風を通してくれるのならお貸しします。

大家さんが私たちに物件を貸すことを決めたときの言葉は今でも私たちの胸に深く刻まれています。
亡くなられたご家族は毎晩ビールを飲まれる方と大家さんから聞きました。
天国にいるご家族様にも気に入ってもらえるようなビールを目指そう。

2021年4月、醸造所にする物件が決まったものの、当時21歳だった代表の西原にはまとまった貯金もなければ 銀行から融資を受ける信用もありません。
そこで近年、元SMAP草彅剛を起用したテレビCMでも話題になったCAMPFIREで資金を募ることにしました。

同年1月に広島県呉市で20年以上クラフトビールを造ってこられた海軍さんの麦酒が閉業されたタイミングだったため、私たちが呉市でクラフトビールを造ると発表すると広島県内外から多くの応援メッセージと支援が集まりました。
テレビや新聞でも取り上げていただきこのクラウドファンディングを通して金銭以上の人との繋がりと認知を得ることができました。
当時まだ名も無いIBBREWINGに344人、2,257,185円もの支援をいただきました。

このクラウドファンディングの成功がなければ醸造所完成はもっと先になっていました。
感謝してもしきれません。

2012年6月、私たちの醸造所となる古民家は築70年。
大きな敷地に納屋と母屋が並びます。
私たちは納屋を改装して醸造所に、母屋を改装して貯蔵庫、コワーキングスペースにする計画を立てました。

2018年の豪雨災害後、3年間もの間空き家になっていました。
人が住まないと家はどんどん朽ちていきます。
湿気が溜まり床材も壁も傷みが激しく、屋根裏をネズミが走り回る。
私たちが手をつけ始めてまず取り掛かったのは家具、生活用品の処分でした。
軽トラにゴミを乗っけては30分かけて焼却炉まで持っていく作業を30往復以上、処分費用は総額で20万を超えました。

少しでも改装費を浮かせるために、土間工事、電気工事、建物の補強以外の内装解体、左官仕事、排水工事は全て自分達で行いました。
それだけで工事費用約50万円を節約することができました。
機材を入れれるようになるまでに期間はかかりましたがこれも美味しいビールを造るための醸造機材を一つでも多く購入するための努力です。

2021年12月上旬、無事に内装、外構DIYが終わり外国のメーカーにオーダーした醸造設備の到着を待つのみとなりました。
税務署に申請しなくてはいけない「醸造免許」取得には5ヶ月かかると言われていたので4ヶ月で終えるよう計画を立て、少しずつDIYしてきました。
DIYに力を貸してくださった皆様本当にありがとうございました。

9月に正式発注をして約3ヶ月。
ようやくIB BREWINGの醸造所へ設備がやってきました。
設備の運搬費を抑えるためにIB BREWINGお得意のDo It Your Self!
広島県坂町の港に着いた設備をハイエースに乗せ、自分達でどんどん運びます。
ハイエースに乗せれない大型タンク類は4トントラックへ。
設置費用も抑えるため、業者は呼ばず250kg超えのタンクを大人4人で設置していきます。
少しは工場っぽくなってきました。

2022年2月、国税局から2月17日付て発泡酒製造免許を交付していただきました。
申請から交付までの期間はおよそ5ヶ月。
とんでもなく参入障壁の高い事業に挑戦してしまったと思いながら免許交付を待っていましたが、この5ヶ月間、何度も税務署と保健所に足を運び、何十枚という申請書を作って本当に良かったなと振り返り感じます。
ここからがIB BREWINGの夢の始まりです。

2月下旬に初仕込みを終えることができましたが、出荷できるビールが作れたのはなんと4仕込み目でした。
初仕込みから3回仕込んだ分のビール(およそ1500本分)は、発酵不良、酸化等が原因で全て破棄にしました。
正直、経営的に考えてもきつい状況でしたが、自分達が大好きでやっとの思いで始めることができたビール作りには一切の妥協もしたくない、この芯はブラさず、納得いくまで何度も仕込み直しをしました。
そして、ようやく4回目に仕込んだビールで「美味しい!」と2人で口を揃えることができました。

2022年5月、自社醸造が始まり2ヶ月。
ありがたいことに全国からたくさんの取引先様に恵まれ、欠品が続く日が増えてきました。
しかし、納期が最長1ヶ月待ちとなることもあり、同時にお取引先様にご迷惑をおかけすることも増えていきました。
元々設備自体大きなものではありませんが計画当初の予定では製造量は問題ないと思っていました。
しかしこれ以上今IB BREWINGをお取り扱いしていただいている店舗様にご迷惑をおかけするわけにもいかないと、自社醸造始めて2ヶ月で設備増設の話が持ち上がりました。
ところが、設備増設には昨年以上の資金が必要であり、ハードルも高いものでした…

2022年7月、昨今のクラフトビール業界の瓶から缶への切り替えの流行に遅れまいと缶の充填機の導入を決めました。
元々、卸売がほとんどのため、物流コストが安価な缶に切り替え、お客様により手軽に低価格で楽しんでいただけらという思いからでした。

広島県内では2022年7月現在、缶の充填機を保有しているブルワリーはありませんでした。
缶の充填機はとても高価な機械で、スペースも取るため、小さなビール工場には導入のハードルが高かったのです。

私たちは、呉市のふるさと納税の仕組みを使い、ふるさと納税型クラウドファンディングで資金を募りました。
ありがたいことに充填機購入資金を集めることができ、広島県第一号の充填機が到着しました。

2022年5月に構想を描いた醸造所増設計画をこれまで水面で進めて来ました。
増設にあたりまたまた莫大な投資になります。
お金の工面、施設の改装、醸造設備のオーダーなどやることは尽きず5月から4ヶ月間、2人で協力してなんとか醸造所増設を実現することができました。

今回増設した機械は、既存設備の3倍規模の醸造設備一式です。
これで醸造量も3倍に!

醸造量が少なく供給不足によりこれまでたくさんのお取引先の皆様、お客様にご迷惑をおかけしましたが、増設によりもっと多くの方に手に取っていただけると思うと本当にワクワクしています。
これまで以上に挑戦的な大人心くすぐるようなビール作りに挑戦していきたいと思います。

このビールは

ローストされたひまわりの種を使用したセッションウィートエール、”Sunflower Wheat Ale”。
爽やかでありつつも、ほんのり香ばしい味わいが特徴です。
小麦特有の口当たり柔らかな甘味をお楽しみください。

テイスティング

濁りレモン色。
香りは柑橘のフルーティーな香り。
酸しっかり。
余韻にも柑橘の皮のような苦みが長く残る。

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