飲んだワイン トアール/ジキ 環(めぐる)2021 6点

初めて飲んだワイナリー。
還元香やら酢酸エチルやらが凄すぎて個人的には全くグッと来なかった。
開けてからデキャンタに入れて1時間後位に飲んでみたらもう少し違ったかもしれません。
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ワインデータ
ワイン名:Jiki 環
生産地:Japan > Hokkaido
生産者:10R Winery (トアール)
品種:Chardonnay (シャルドネ), Sauvignon Blanc (ソーヴィニヨン・ブラン), Pinot Blanc (ピノ・ブラン)
スタイル:White Wine
ワイナリー
「じき」は2017年4月に北海道は余市の地にワイン葡萄農家として生まれました。
私たちは季節感を大切にし、大地に真摯に向き合って、人の根幹を為す「食」を豊かにし、持続可能な営みを実践したいと考え、余市町へ移住しました。
ただ、最近は持続可能(サスティナブル)という言葉に踊らされるのではなく、この大地や自然環境と馴染むような生活、共生をテーマに営みを送っています。
「じき」には「時季」、「正直」、「喰」の意を込めています。
畑担当が「じきの畑」、食・加工担当が「じきの台所」です。
余市は四方を海と山に囲まれた風光明媚な土地で、夏は暑すぎず冬は寒すぎず自然環境にとてもに恵まれています。
そして海の幸、山の幸が豊かで野菜や果樹栽培が盛んな地域でもあります。
そのような魅力に惹かれ、自然豊かな環境で生活をしたいと考えていた私は、農業を一生の仕事にすると決め、2015年に家族で余市へ来ました。
その後2年間の農業研修を終え、2017年春に独立して現在に至ります。
「じき」では大きく2つの取組をしています。
1つは「じきの畑」として農業とワイン醸造を行うこと。もう1つは「じきの台所」として食の提供を行うことです。
「じきの畑」では、ワイン用葡萄の栽培を主軸に野菜・梅・栗の栽培を行っています。
圃場は全て有機JAS認証を取得しています。
「じきの台所」では、「じきの畑」の野菜や地域で生産された食材、そして園主が獲ってきた山菜・茸・渓魚・鹿(処理場を通しています)を使った自然食を町内にある余市テラスさんを間借りし、毎週金曜日に提供しています。
また、加工品の販売なども行っています。
一番のお気に入りスポットは葡萄畑の丘のてっぺんです。
春夏秋冬それぞれの時季に素晴らしい景観を見せてくれますが、特に好きなのは夏から秋にかけての黄昏時に赤く染まった葡萄畑です。
この美しさは何にも代えがたく、毎日感動し、飽きることがありません。
一日の疲れも飛んでしまうほどです。
また、母羊を3頭飼っていて毎年2月~3月に子どもが生まれます。
雌の場合はお母さんとして育て、雄の場合は家族での消費、もしくは希望のある飲食店さんへ出荷しています。
「じき」のワインはラブルスカ種(生食用葡萄)は一切使わず、ヴィニフェラ種(ワイン専用種)100%で造っています。
そしてその全てを野生酵母で発酵させ、清澄剤や培養酵母等の添加は行わず、極少量の亜硫酸添加orサンスフルにてノンフィルターで瓶詰めしています。
葡萄の持っている力を可能な限り引き出したい。
そのために不必要な場面では可能な限り手を加えない醸造を心がけています。
収穫された葡萄が持つ力を削る造り、磨いたりするような引き算の造りは目指していません。
2023vtまでは原料葡萄の殆どは「じきの畑」の葡萄を使い、極一部NPO法人エコビレッジの葡萄を使用していました。
エコビレッジの葡萄畑は2022年より有機JAS認証を取得しています。
2024vtからはじきの葡萄のみでの醸造となります。
ワインは全て岩見沢の10Rワイナリーにて醸造しています。
2017年の仕込みから毎年10月、11月は岩見沢へ単身赴任し、2か月間みっちりと醸造に明け暮れます。
葡萄の質がワインの出来へ強く影響することは先にも述べました。
ですが、良い葡萄が出来ても醸造次第で、80点の葡萄から30点のワインが出来ることも起こり得ると考えます。
葡萄は破砕して放置すれば、その果汁は酵母の働きでアルコールへと自然に変化していきます。
つまり誰でも葡萄からある種の「酒」と呼ばれるものは造れるのです。
しかし、ワインという液体はそれとは別次元にあると考えています。
その液体を造るためには、ある程度の長い研鑽と経験が必要と私自身は考えています。
日々重要だと感じるのは醸造時のリスクと対処法、そして酸素の使い方。
最近では醸造哲学と醸造学的な思考のすり合わせも大事だと考えています。
こればかりは私の葡萄だけだと経験数が圧倒的に足りません。
ですので、少なくとも10年間は10Rで醸造に携わり、勉強したいと考えています。
しっかりと地に足を着けて「ものつくり」の道を一歩ずつ進みたい。
そのため現在、自家醸造(ワイナリーの建設)への切替えは考えていません。
このワインは
~葡萄について~
じきの畑の有機ブドウだけを使用しています。
品種はシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ブラン
~じきの畑が考える白ワインについて~
じきの畑はアロマティック系の葡萄を植樹していません。
また、黒葡萄をブラッシュした白ワインも造っていません。
前者の理由としては、アロマティク系葡萄を使うと葡萄が「熟れた」状態でなくとも芳醇なテルペン香が立ち、葡萄本来の熟度の高さから変化するアミノ酸の組成、その後に酵母菌によって生成されるエステル香をマスキングしてしまうようにも思えるからです。
最終的にはバランス的なところもあると思うのですが、特に冷涼な北海道であれば尚更だと思っています。
テルペン香は葡萄本来の香気成分で熟度がそこまでいかずともアロマティック系と言われるミュスカ系やゲヴェルツ、ケルナー種などには豊富に含まれます。
ノンアロマティック品種でも熟度が高くになるにつれ高含有になりますが、量としてはアロマティック>ノンアロマティックです。
代表的なのはマスカットに代表されるような麝香臭などアタックから芳しい芳香成分を立たせます。
また、それとは全く別になりますが、ラブルスカから発せられる香り(アントラニル酸メチルをはじめとした北米種葡萄から発生される香)も葡萄自身から発せられる香りがメインです。
個人的には8月のナイアガラの香りは葡萄の旬を知らせるものですが、9月の上旬になって熟度が増してくると登地区全体がナイアガラの香りに満たされ、畑仕事をしていると若干の胸やけすら起こしてしまうほど強烈になってきます。
ナイアガラ臭はある意味では行き過ぎた吟醸香のようなケバさすら覚えることもあります。
ワインは葡萄のポテンシャルが第一にあるのは当然ですが、その葡萄本来のポテンシャルを見てもらうためにはアロマティック系の比率、黒葡萄のブラッシュ比率が高い白ワインは白葡萄単体から造った白ワインと同じ土俵なのかと思うこともあります。
当然互いに良さはあります。
ただ、自分は葡萄が持つ香り以上に熟度の高い葡萄を発酵させ(アセチルcoaとAATの働き)たことによって発生する香り(エステル香)やその前駆体である高級アルコール(フーゼル油)を感じてもらいたい気持ちが強いです。
また、黒葡萄のブラッシュワイン(白ワイン)は確かに芳しく、且つ豊潤さ、線の太さを持っています。
しかし、白ワインの繊細な中にもある種の儚さと一本線の通った芯を感じさせるものは、白葡萄単体からのみでしか表現できないようにも感じています。
なので、じきの畑ではアロマティック系葡萄は植樹しませんし、黒葡萄をブラッシュして白ワインを造ることもしません。
今後もこの考えは変わることはないと思います。
もちろんヴィニフェラでのみワインを造り続けます。
~造りについて~
じきの畑の葡萄100%のワインです。
2022vtは夏の干ばつなどは特になく、収穫期も晴れに恵まれる機会も多かったように思います。
ただ、熟度的なことは21vtに劣っており、収穫期を少し引っ張りました。
じきの畑は収穫を10/22に行い、病果や腐れなどを徹底的に選果したシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ブランをホールバンチにて圧搾しました。
圧搾後、3日目にデヴルバージュを行ってステンレスタンクへ移動しました。
その後、野生酵母による発酵を行いました。
発酵終了後に野生乳酸菌にMLFを行ってもらい、ステンレスタンクにて保管しています。
タンク保管中にエアレーション目的で2回ほどタンク移動を行っています。
一回は亜硫酸を15ppm添加しています。
発酵最終盤から中々brixの下がりづらくなり、代わりに乳酸菌由来のVA生成がタンク下で目立ち始めました。
澱との接触はワインへボディ感と良い意味での還元臭をもたらし、芳ばしい香りをつけてくれることもありますが、残糖のある状態でスタックした場合で、且つ時間の経過した澱は有機体窒素が豊富である一方、酵母菌の活性が落ちている関係も相まって、特に嫌気的環境にあるタンク底の澱との接触部分でヘテロ型乳酸発酵の2型が進行し、6単糖や5単糖を資化させて酢酸と乳酸を生成してしまいます。
これについては一度目のタンク移動の際に気づき、軽い澱も含めた澱も2回目の澱引きでは除きました。
それに伴い、酵母菌による発酵も更に進みづらくはなるのですが、VA量が増えることと天秤にかけると前者を選択した次第です。
じきのワインは添加物の一切(亜硫酸以外)を使用していないため、乳酸菌に効果のあるリゾチーム、フマル酸等の添加、そしてフィルタリングや加熱といった処理も行っていません。
自然な流れのまま製造し、手を加えるべきところでは手を加えるという手法を取っています。
そうなってくると白ワイン醸造における乳酸菌のコントロールがやはりネックになっています。
スムーズに酵母菌が食い切ってくれれば何も問題はないのですが、葡萄の品種や畑の生育環境による葡萄そのもののポテンシャル(食い切りやすい葡萄や食いづらい葡萄があるのは事実)が酵母菌に好まれていない可能性があります。
一方で、その解決策として発酵中でのエアレーションや醸し作業があるのですが、前者は23vtで試したところそこまで効果のある作業ではないことが分かりました。
そして、もう一方の醸す作業ですが、白ワインにおいて「醸す」という醸造工程を取ることが個人的にはあまりやりたくない手法のため、避けていることも一つの理由なのかと考えています。
サンプルバルブから引いてきた液体からは、トップにパイナップルやマンゴ等トロピカルフルーツ香が立ちます。
VAもありますが、香りの観点からは良い方向に働いています。
その後レモン、キンカンの香りが上がり、スワリングすると熟れた洋ナシの香りがたってきます。
21vtほど暴れている印象は全くありません。
ただし、まだ甘みが若干あります。
液体としての透明感はかなりあるため、今瓶詰めしても動きづらい状態であるのは分かるのですが、やはり食い切らせてから詰められればという希望があります。
口中に含むとアタックに若干の発泡感と丸みのある酸、そしてボリューミーな果実感が押し寄せます。
タニックな感じは強くなく、程なくして厚みのある柑橘系の味わいが広がります。
ミドルからアルコールの影響からボリューミーな果実感が押し寄せます。
喉奥にVAを感じますが、個人的には好みの範疇です。
飲む際には室温より若干冷え気味から飲んでいただくことが好ましいかなと思います。
私の好みの温度帯は15度くらいです。
個人的には抜栓5日目くらいが好きでした。
2日目以降は酸化ニュアンスが出てきますが、5日目くらいで落ち着き、和柑橘系の香りがより立ってきます。
(※22vt環はまだ瓶詰めしていません)
~ワイン名について~
「環」と書いて「めぐる」と読みます。
私は、昔から生きとし生きるもの(生物を構成する小さい単位としての原子)がこの世を循環している歯車の一つであり、環り環っているのだという考えがありました。
そして、余市へ来てからその考えはより強いものとなっています。
畑でできた葡萄からワインが造られて、そのワインを飲み、飲んだ人がまた畑を耕す。
その過程で出た残渣は畑へ戻る。
そのような先史時代からずっと紡がれてきた農業や醸造、いやそれよりもっと昔からある「生」という営みをワインを中心に置いた「循環」として表現したいと思いました。
詳しくはこちらに記載しています。
https://www.jiki.wine/blog/2021/02/19/161929
テイスティング
このワインは淡い濁りのあるレモンイエローです。
わずかにガスが含まれるため、グラスの中に繊細な泡が見られ、活き活きとした印象を与えます。
この見た目からは、自然派ワインらしい手作り感とフレッシュさが感じられます。
香りは還元香全開で、10Rによる醸造と言う感じがします。
酢酸エチルが強過ぎて良く言えばトロピカル感満載、悪く言えば強烈なセメダイン臭です。
果実感が豊かで、リンゴ、レモン、グレープフルーツといった柑橘系から、パイナップルやアプリコットなどのトロピカルなニュアンスまで多彩に広がります。
ほのかに漂う酢酸が全体を引き締めつつ、砂糖漬けのグレープフルーツやパイナップルのような甘やかで熟成感のある香りも顔を出します。
さらに、爽やかなハーブのニュアンスがアクセントを加え、複雑で立体的なアロマを楽しめます。
味わいは突出した酸が特徴で、フルーツジュースを思わせる親しみやすい果実味が広がります。
リンゴのピュレや砂糖漬けのグレープフルーツ、熟したパイナップルの甘みが凝縮感を持って感じられます。
酸味はキリッとしたニュアンスで、全体に清涼感をもたらします。
わずかなガスが舌の上で心地よく弾け、ドライな仕上がりが余韻に軽やかさを与えています。
個人的には苦手なセメダイン臭が強過ぎてダメでした。
HPを拝見すると、折角こだわって栽培収穫しているのに、勿体無いなと言うのが正直な感想。
飲んだ日:2024-11-01
飲んだ場所:オアシス
価格:3,630円